幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。



「……はあっ!何すんの!?」


 やっと離してくれたと思ったら、今度は怒ったような切ないような、ちょっと捨てられた子犬みたいな表情をして――どこまでも私の心臓をギュンギュンさせる。


「ちょっと!?」


 今度はぎゅうっと抱きしめられて、もう何が何だかわからない。私の感情はジェットコースターだよ!!


「そんな顔、誰にも見せるな」

「えっ!?」

「俺が好きで仕方ないって顔」

「はあああ!?」

「俺のことが好きなのに、犬なんかに構ってんじゃねぇよ」


 犬って、もしかして悠生のこと?
 さっきの見てたの?


「違うよ!悠生は忘れ物届けに来てくれただけっ」


 私は手に持ってるリコーダーを見せる。


「てか何?悠生にヤキモチ妬いてたの?」
「…………」
「いはいんらけろっ!!」


 おもちを伸ばすみたいにむにーっと無言で私の頬をつまんで引っ張る那桜。
 これは絶対図星だな!?ヤキモチ妬いてたな??

 てか悠生に妬くってバカじゃないの?
 あいつは兄妹みたいなもので、家族同然なのに。

 無駄に自信家のくせに勝手にヤキモチ妬いて、勝手にキスするし。
 プロポーズされたあの日から、那桜にずっと振り回されてばっかり。

 ほんとにもう、那桜なんて――




「……好き」




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