幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


「一番近くで見ているわたくしの気持ちにもなって欲しいですわ。毎度鏡花が惨めに負ける姿にどれだけ心を痛めていることか」

「誰が惨めだ!!」

「鏡花の負けず嫌いも困ったものですわね」

「それより八重、バレーしないでどこ行ってたの?」

「お抹茶をいただく時間でしたので、上から鏡花の活躍を見守っていましたわ」

「堂々とサボるなよ」


 周囲の男子たちよ。これが君たちの憧れる八重姫だぞ。
 高嶺の花を見つめる眼差しを向けてるけど、案外強かで辛辣な奴だぞ。


「八重姫、お疲れ様です」
「まあ那桜さん、素晴らしい活躍ぶりでしたわね」
「八重姫に褒められるとは光栄ですね」


 なんかこの二人が会話してると周りの空気がゴージャスになる気がするのは、気のせいだろうか。


「そういえば那桜さんに渡すものがございましたの。どうぞ」


 八重がそう言うとどこに控えていたのか、八重の御付きがすぐさま何かを那桜に差し出す。

 警視総監の娘である八重は狙われやすく、常に護衛が付いてるんだよね。
 私たち桜花組も有事の際にはすぐに動けるようにしている。ちなみに染井とどっちが八重の護衛するかで争ったこともある。

 那桜が渡された箱を開けてみると、私でもわかる見事に美しい湯呑みが入っていた。


「これは……人間国宝と言われる陶芸家の作品ですね?」
「流石は那桜さん、ご存知でしたのね」


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