スイートルーム


『あいつは戻って来ない』

『戻ってきても、俺が無理だから』



そう呟くようにして言った彼の顔が、あまりにも悲しげだったから……。



――言っちゃダメだよ。バレたら処分を受けてしまう……。






「わたくしで良ければ、夕食、ご一緒いたしましょうか?」




言った瞬間――。


もう一人の厳格なホテルマンのあたしが、見る影もなく消え去ってしまった。



< 32 / 94 >

この作品をシェア

pagetop