スイートルーム
【4】鉄則破り
「お疲れ様でしたっっ!!」
勤務が終わった午後六時。
あたしは更衣室で私服に着替えたあと、化粧をなおし、ホテルの正面玄関に向かった。
玄関には同じ部署のドアマン、石倉さんが立っている。
四十代の石倉さんはベテランのホテルマン。
ドアキャプテンという立場上、ホテルのルールに一番厳しかった。
あたしは正面玄関にそびえ立つ大理石の大きな柱に身を潜め、彼が来るのを待つ。
あたし……、とんでもないことやっちゃったよ。