スイートルーム
確かにそうだ。
『戻ってきても、俺が無理』
そうは言ったけれど、二人は正式には別れていない。
別れるどころか、一時的な喧嘩なのかもしれない。
「あの人がどれだけ今日を心待ちにしていたか、おまえ、知らないだろ?」
「えっ?」
彼が心待ちにしていた、今日という特別な日……。
困惑しているあたしに、市来くんはきっぱりと言ったんだ。
「……あの人、今日、彼女にプロポーズする予定だったんだよ」