スイートルーム


笑って、花束を引っ込めようとする次郎に、あたしは呟くようにして言った。



「それ、彼女に贈るはずだったんじゃないの?」


「……まさか。美月と夕食の約束をしたあとに、美月に贈ろうと思って買ったんだよ」


「あたしに……?」




どうして、あたしに?



訊きたいけれど、
次郎があたしのために花を準備していたことが素直に嬉しくて……。



「ありがとう」



知らずのうちに、あたしは笑っていたんだ。


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