スイートルーム


それは、あたしが次郎と出会う直前のできごとだった。

あたしはこの時の二人を、離れたところから見ていたんだ。



「彼女、拒絶してさ。『むこうとは別れるから、考え直して』って」


「………」


「で、彼女に言った。『俺はもう無理だから』って」


「じゃあ、その時に?」


「あぁ、殴られたってわけ」



そっか。

次郎はあたしにも言っていた。



『俺が無理だから』って。


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