スイートルーム
「昨日の夜あいつ、『やり直そう』ってホテルに戻ってきたけど断った」
すっきりした顔で、あたしを見る次郎。
その顔には、かすかに笑みが浮かんでいる。
「結婚してもうまくいってなかったかもな。
あいつ、根っからのブランド好きでさ。
一度、クリスマスに花を贈ったら、『こんな花いらない!』って突き返されて」
自嘲気味に笑っている次郎を見て、昨日もらった小さな花束を思い出す。
あたしにとっては、どんなに高級なブランド物よりも価値のある花束。
それは、次郎がくれた花束だから……――。