神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。
「おいしい……」
「それは良かった。若い子にはもっと凝ったものの方が良いかと思ったんですが、気に入っていただけたようで何よりです」
未熟な小娘にも丁寧な態度で接するアルトナーに、マルガレタは何故だか安心感を覚えた。
(この方、やっぱり悪い方じゃないというか……どうしてかしら? お話していて、どこか安らげる気持ちになるのは……)
丁寧な態度や言葉遣いもそうであるが、マルガレタと彼はことごとく相性が良いようだった。
それこそ用意されたケーキに始まり、趣味嗜好、ものの考え方、そういったものがいずれも“合う”のである。
会ったばかりで大した会話もしていないのに、パズルのピースがハマるように、彼女は目の前の男との感性が馴染んでいくのを感じていた。