神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。
そこでアルトナーが「ともあれ、神託の件ですが」と話題を戻す。
「手紙に記した通り、国教会に表立って反発するのはためらわれるでしょうから、今回の件は私が強く拒んだことにしましょう。ですので、要請が来てもそちらからは返答せず、一度書簡を転送していただけませんか。すり合わせて、そちらに非のない文面にしたいので」
「え、ええ。そうしていただけるなら……私の父も異論はないかと思います」
「でも、いいんですか」と聞くより先に、アルトナーはマルガレタへと、次のような頼みを持ちかけた。
「代わりといっては何ですが……これから数回の打ち合わせの際、少しだけ、私との話に付き合ってくれませんか」
「え、お話……ですか?」
「ええ。マルガレタ嬢は、王都の学園に通っていらっしゃると聞きました。私もそこの卒業生なのですが、いかんせん二十年も前のことでして。今の若者の学園生活というやつを、よければ教えて欲しいのです」