神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。
大聖堂での対峙

08.


 一か月後、国教会からの婚姻命令を受けたアルトナーは、しまったと舌打ちをした。

 まさかこんな強硬手段に訴えてくるとは思わなかった。
 いくらなんでもやりすぎではなかろうか。

 とはいえ、ここまで来た以上、口先だけで拒否していてもらちが明かない。
 彼はこの機に乗じて決着をつけようと、あえて招集通知を受け入れ、王都の大聖堂に向かうことにした。

 ただ、教会側の権限により、彼だけでなくマルガレタも出席することが話し合いの条件とされた。

 それに従わざるを得ないことに、アルトナーは強く歯噛みした。
 冬も過ぎ、季節は春。マルガレタにとって、今は学園の進級試験などで忙しい時季だからだ。

(せめて彼女の手を煩わせず、こちらだけに手間を留め置ければ良かったのだが……)
 
 四十路間際の中年貴族はそんなことを思いながら、王都へ馬車を走らせる。

 そして、大聖堂へと入場すると、すでにすべての役者が揃っていた。
 先に到着していたマルガレタ。
 その周りを国教会の関係者が取り囲み、神託の巫女が中央の壇上で皆を見下ろしている。

 アルトナーが歩を進めると、最高責任者である大司教が口を開いた。
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