神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。
09.
「不幸な結末、ねぇ……」
国教会は権力を持っていても、実力行使をするような集団ではない。
彼らは何か行動を起こそうとしているわけではない──それが単なる強要の言葉に過ぎないことを、アルトナーは司教の声色から察した。
とはいえ、巫女の名声を笠に着て、二人を無理矢理結婚させようとしていることに変わりはない。
まったくもって理不尽なことである。
(何だっていうんだ、本当に……)
アルトナーは辟易として、巫女を見上げた。
彼女はその視線に気づき、「どうか従ってください。あなたたちの幸せのためにも」と声を掛ける。
と、そこへ、一人の男性が堂内に駆けこんできた。