神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。

12.


 続けてアルトナーはマルガレタに向き合って、今度は優しい声音で彼女に告げた。

「ところでマルガレタ嬢、今日は学園の卒業式のはずだけど、君のあこがれの先輩は確か最高学年じゃなかったかな? 式はともかく、午後からの卒業パーティーなら今から行っても間に合うと思うんだ。ここはもういいから、行っておいでよ」

 幾度かのお茶会を経て、マルガレタと親しくなったアルトナーは、そう言ってくだけた口調で彼女に勧めた。

「お、憶えていらしたのですか……? で、ですが、神託のことは、私もこの場にいた方が……」

「大丈夫、私に任せて。こんなことより、君の学園生活の思い出の方がよっぽど大事だよ。さあ、早くしないと遅れちゃうから、さ」

「……! はい! ありがとうございます、おじさま!」

 マルガレタは感激した様子で一礼し、きびすを返して走りだす。

 それを見た巫女は「え、待って」と引き留めようとする。
 アルトナーは巫女の視界を塞ぐように身を割り込ませると、令嬢がこの場を去った後、静かな声で言った。
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