神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。
「だから、神が人の運命を決めるなんて、はっきり言っておこがましいんだよ。参考程度のアドバイスくらいなら、聞いてやってもいいけど」
「あ、アルトナー伯爵! 貴公は自分で何を言っているのか、わかっているのか!」
「ああ、そうだ。国教会の方々にも、ご報告しておきたいことがありましてね」
叫ぶ大司教へ被せるように、アルトナーは言う。
「こちらの巫女殿、あなた方と同じ赤茶の髪をしておられますが、ルーツは全然違いますよ。彼女が我々の国に来た経路はアルデマイラからですが、出身は南方のパルパマだったはず。
同郷人を囲い込んで派閥の権力を高めたいとの思惑がお有りなら……恥をかくので、やめておいた方がよいかと」
「な、何!?」
大司教が驚いて振り返ると、巫女はきょとんとして「え、ええ。確かに私はパルパマの出身ですが……」と答えた。