神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。

「それでは……あなたのおっしゃることが正しいのなら……私のやってきたことは、無駄だったのでしょうか……?」

「……そこまでは言っていませんよ。あなたが他者のために神託を役立てたいと思っているのは理解しています。ですが、だからこそ、それをどのように用いるかについても、慎重に判断して欲しいのです」

「……」

 巫女はアルトナーの言葉を噛みしめるように押し黙る。
 それから彼女は少しの間を置くと、何かを決意したように唇を引き結び、彼に言った。

「……わかりました。私にもまだ……何が正しいのかわかりませんが……もう少しだけ、考えてみます」

 巫女の言葉にアルトナーは満足そうにうなずいて、「ありがとう」と返したのだった。
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