神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。

「んー……じゃあ、今日は残念会ということで、私の分のケーキもあげるよ。あ、でも、ヤケ食いはしないようにね」

「ありがとうございます……。……おいしい……おいしいですけど……うぅ、涙がしょっぱいですわ……」

 初対面の時のようなかしこまった空気はなく、二人は打ち解けた様子で語り合う。
 それはとても和やかに、穏やかに。

 傍らで待機するアルトナーの執事は、そんな彼らのやり取りに、「お二方とも、やはり神託通り、相性はこの上なく良いのでは……?」と、声には出さず思ったのだった。



<おわり>
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