神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。
「まさか、そんな……本気なのかしら」
手紙を読み終えたマルガレタは、信じられないといった様子でつぶやいた。
我が家から婚姻の要請を拒むのならまだわかる。
実際、自分はこんな歳の差の結婚はごめんだし、こちらの伯爵家がそれより劣るアルトナー家と結びつくメリットもない。
しかし、彼の方から破談を申し出るとはどういうことなのか。
確かに、よく知りもしない娘と結婚するというのは、向こうからしてもためらわれるところだろうが……。
(……もしかして、男色家とか? それとも、極度の人見知り? あるいは本当に……私の将来を、ただ心配してくれているだけなのかしら……)
もしそうであるなら、この男性はとても尊ぶべき人なのではないだろうか。
婚姻を拒まれたことで、マルガレタは彼がどんな男なのか、逆に興味を引かれてしまった。
それに、どのような方針で行くとしても、相手の顔すら知らないのはさすがに失礼だ。
国教会に従わないにしても、口裏を合わせるため直接会って話をしておいた方がいい。
そんな理由で自分を納得させ、彼女はアルトナー邸へ向かうことになったのだった。