神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。
彼の屋敷にて
05.
「初めまして。ウーヴェ・アルトナーです」
手短な自己紹介でマルガレタを屋敷に迎え入れた彼は、どこにでもいるような普通の男だった。
特段美形というわけでもない、どちらかといえばキツい感じの顔立ちだ。
後ろに流した漆黒の髪には多少の白髪が、鋭い目つきの目もとには、少しばかりの隈が見える。
背は高く、痩せ型で、どこか人を寄せ付けない印象を受ける。
ただ、マルガレタに見せる表情は柔らかく、警戒心を抱かせないようつとめて笑顔を作っているようだった。
「お招きいただきましてありがとうございます。マルガレタ・シュミットと申します」
挨拶を交わし合った後、着席を促されるマルガレタ。
アルトナーは早速用件に入った。
「手紙でもお伝えした通り、こちらとしてはあなたとどうにかなるつもりはありませんので。遠慮なく、国教会からの要請を断っていただければと思います」