好きな事を言うのは勝手ですが、後悔するのはあなたです
10 待ってる?
「本当にごめん! アンジェ! やり直したいんだ! 僕にチャンスをくれないか!? 僕にはやっぱり君しかいないとわかったんだ!」
「そんな嘘に騙されるわけないでしょう」
彼には聞こえないとわかっていても、つい言葉を返してしまった。
君しかいないだなんて、そんな嘘に騙される人は私しかいないって事?
私と婚約破棄する時に、この人は私になんて言ったか覚えていないのかしら…。
あれだけ言いたいだけ言いたい事を言っておいて、今更、私しかいないですって?
後悔したって遅いのよ。
「浮気男は最終的に妻の所に戻るのと一緒だよ! やっぱり僕には君しか」
何か叫んでいたのに、途中で言葉が止まった。
護衛騎士が彼を捕まえてくれたみたいだった。
「ちょっと待ってくれ! 話の途中なんだ!」
「申し訳ございませんが、あなたを見かけたら排除しろとの命令ですので」
「誰の命令なんだよ!?」
「もちろん、当主のティーノ子爵からでございます!」
「ちょっと待ってくれ! 僕は義理の息子になるんだぞ!?」
どうしてそうなるのよ?
窓から外を覗いてみると、暴れているハック様が見えた。
本当に路上生活をしているのか、着ている服は薄汚れていて、髭も伸び、昔の面影がないくらいに老けてしまっていた。
気付かれない内に、窓から離れて耳を塞ぐ。
けれど、彼の声は聞こえてくる。
「頼みます! この何日か、ほとんど食べれていないんです! お願いします! せめて、お金を恵んで下さい! お願いします! アンジェ! 頼むよ! 本当に悪かった! 後悔しているんだ! あの時の僕はどうにかしていた! このままじゃ死んでしまうよ!」
「それくらいの事をしたと思って諦めろ」
ラルの声が聞こえて、私は思わず窓に近付いて外を見る。
すると、姿は見えないけれど、ラルの怒っている声が聞こえる。
「アンジェに近付くな。もう、お前は平民で、アンジェの婚約者に戻れる立場じゃないんだよ」
「な、何だよ! 魔道士だって平民みたいなものじゃないか!」
「うるさいな。俺はお前とは違って、自分で男爵の爵位をもらったんだよ」
「な…、そんな…、まさか、アンジェの為に…?」
どうして、私の名前が出てくるの?
「……違う。俺のためだ」
「最終的にはそうかもしれないが、僕とアンジェの婚約が駄目になった時の事を考えてじゃないのか!?」
「何でそう思うんだよ」
「……僕は、昔から浮気をしていたから…」
「最低な野郎だな」
ラルは吐き捨てる様に言うと、護衛の人に向かって言う。
「住むところがないようだから、警察に連れて行ってやってくれ。そうすれば寝場所と食には困らないだろうから」
「承知しました」
「ちょっと待ってくれよ! どうして警察に!?」
「貴族の馬車の進路妨害をしている上に、元婚約者に無理矢理会いたいなんて言ってるんだから、かなりの迷惑行為だろ」
「それくらい見逃してくれよ! こうでもしなきゃ、アンジェと話せないからだよ! このままじゃ僕は死んでしまう! なら、死ぬ前にやらないといけない事は、アンジェと仲直りする事だって気が付いたんだ!」
どうして私と仲直りなの?
本当にやらないといけない事はコッポプ伯爵に認めてもらう事なんじゃないの?
それにさっきと言ってる事が違わない?
「アンジェ! 僕は君を待ってる! あの、留置所で待ってるから!」
そんな所で待たれても困るんだけど!?
「いいかげんにしろ!」
ラルの叫ぶ声が聞こえた。
とにかく、これは私が出ないと駄目みたい。
好きな事を言わせてあげたんだから、私の意見も言ってもいいわよね?
そう思い、私は内側の鍵を開けて、馬車の外に出た。
「アンジェ!」
護衛の人に引きずられていたハック様が私を見て笑顔になった。
「ハック様、私はあなたと仲直りするつもりはございません!」
心配げな顔のラルが私に何か言う前に、私はハック様に向かって、そう叫んだのだった。
「そんな嘘に騙されるわけないでしょう」
彼には聞こえないとわかっていても、つい言葉を返してしまった。
君しかいないだなんて、そんな嘘に騙される人は私しかいないって事?
私と婚約破棄する時に、この人は私になんて言ったか覚えていないのかしら…。
あれだけ言いたいだけ言いたい事を言っておいて、今更、私しかいないですって?
後悔したって遅いのよ。
「浮気男は最終的に妻の所に戻るのと一緒だよ! やっぱり僕には君しか」
何か叫んでいたのに、途中で言葉が止まった。
護衛騎士が彼を捕まえてくれたみたいだった。
「ちょっと待ってくれ! 話の途中なんだ!」
「申し訳ございませんが、あなたを見かけたら排除しろとの命令ですので」
「誰の命令なんだよ!?」
「もちろん、当主のティーノ子爵からでございます!」
「ちょっと待ってくれ! 僕は義理の息子になるんだぞ!?」
どうしてそうなるのよ?
窓から外を覗いてみると、暴れているハック様が見えた。
本当に路上生活をしているのか、着ている服は薄汚れていて、髭も伸び、昔の面影がないくらいに老けてしまっていた。
気付かれない内に、窓から離れて耳を塞ぐ。
けれど、彼の声は聞こえてくる。
「頼みます! この何日か、ほとんど食べれていないんです! お願いします! せめて、お金を恵んで下さい! お願いします! アンジェ! 頼むよ! 本当に悪かった! 後悔しているんだ! あの時の僕はどうにかしていた! このままじゃ死んでしまうよ!」
「それくらいの事をしたと思って諦めろ」
ラルの声が聞こえて、私は思わず窓に近付いて外を見る。
すると、姿は見えないけれど、ラルの怒っている声が聞こえる。
「アンジェに近付くな。もう、お前は平民で、アンジェの婚約者に戻れる立場じゃないんだよ」
「な、何だよ! 魔道士だって平民みたいなものじゃないか!」
「うるさいな。俺はお前とは違って、自分で男爵の爵位をもらったんだよ」
「な…、そんな…、まさか、アンジェの為に…?」
どうして、私の名前が出てくるの?
「……違う。俺のためだ」
「最終的にはそうかもしれないが、僕とアンジェの婚約が駄目になった時の事を考えてじゃないのか!?」
「何でそう思うんだよ」
「……僕は、昔から浮気をしていたから…」
「最低な野郎だな」
ラルは吐き捨てる様に言うと、護衛の人に向かって言う。
「住むところがないようだから、警察に連れて行ってやってくれ。そうすれば寝場所と食には困らないだろうから」
「承知しました」
「ちょっと待ってくれよ! どうして警察に!?」
「貴族の馬車の進路妨害をしている上に、元婚約者に無理矢理会いたいなんて言ってるんだから、かなりの迷惑行為だろ」
「それくらい見逃してくれよ! こうでもしなきゃ、アンジェと話せないからだよ! このままじゃ僕は死んでしまう! なら、死ぬ前にやらないといけない事は、アンジェと仲直りする事だって気が付いたんだ!」
どうして私と仲直りなの?
本当にやらないといけない事はコッポプ伯爵に認めてもらう事なんじゃないの?
それにさっきと言ってる事が違わない?
「アンジェ! 僕は君を待ってる! あの、留置所で待ってるから!」
そんな所で待たれても困るんだけど!?
「いいかげんにしろ!」
ラルの叫ぶ声が聞こえた。
とにかく、これは私が出ないと駄目みたい。
好きな事を言わせてあげたんだから、私の意見も言ってもいいわよね?
そう思い、私は内側の鍵を開けて、馬車の外に出た。
「アンジェ!」
護衛の人に引きずられていたハック様が私を見て笑顔になった。
「ハック様、私はあなたと仲直りするつもりはございません!」
心配げな顔のラルが私に何か言う前に、私はハック様に向かって、そう叫んだのだった。