好きな事を言うのは勝手ですが、後悔するのはあなたです
11 救われる?
「ど、どうして、そんなに冷たい事を言うんだよ…」
「冷たい事って…、私だって言いたい事を言わせてもらっただけよ。あなただって、散々、自分の好きな様に言いたい事を言っていたでしょう?」
婚約破棄された時はショックの方が大きくて、言いたい事は言えなかった。
今はもう冷静だし、私が悪いわけだけではない事もわかっている。
浮気される原因を私が作っていたんだとしても、浮気をしてもいい理由にはならない。
それに、髪の色に関しては、最初から言ってほしかったし、何より浮気しておいて、あんなに偉そうな婚約破棄はないと思うわ。
「しょうがないじゃないか! 僕には君がいると思っていたから安心できていたのに!」
「安心…?」
「そうだよ! 僕には帰るところがあるとわかっていたから浮気した。でも、色々とあって、君以上に素敵な人なんていないという事がわかったよ!」
「ふざけないで! あなた、自分の浮気理由をなんて言ったか覚えてないの!?」
「覚えている…ような、ないような…」
「覚えてないんじゃない! 信じられないわ! あなたは私の外見が気に入らないって言ってたの! 自分の髪色と瞳の色まで否定されて、私が許すと思うの?」
今までは、ハック様にこんな強い口調で言い返した事はなかった。
だって、嫌われたくなかったから。
でも、今は違う。
この人に嫌われたってかまわない。
ハック様は泣きそうな顔になって訴えてくる。
「君が許してくれなかったら…、僕は、どうなるんだ…」
「そんな事を私に聞かないで! とにかく、迷惑行為で警察に捕まえてもらうわ。留置所でこれからの事を考えたらどう? その身なりじゃ、女性には相手にされないから、しっかり考える時間はあるんじゃないかしら?」
「留置所に行ったら、僕は救われるのかな…?」
救われる…?
そんな事を聞かれても困るわ。
私が言葉に詰まっていると、ラルが代わりに答えてくれる。
「これは個人の意見だが、救われると思うぞ。警察には女性だっているんだから、良い出会いがあるといいな」
「……そうか。そうだよな…。アドバイスをありがとう」
本気でそんな事があると信じているのかしら…?
ラルの方を見ると、今は何も言うなといった感じで私を見たので、首を縦に振る。
すると、ハック様が尋ねてくる。
「アンジェ…、本当にいいんだな?」
「……どういう事?」
「僕はもう戻らないよ。僕を待ってくれている女性の所に行くから」
「今だって、私の所に来る必要はなかったのよ? もしかして、警察に捕まえられたくて、ここに来たの?」
「ち、違うよ…。君とはあんな別れ方をしたから…」
「気にしなくていいわ。元気でね。もう、あなたとは何も関わりはないわ」
「……ありがとう、君も元気で」
ハック様は騎士に両脇をつかまれて歩いていく。
その背中を見送っていると、ラルが近付いてきた。
「今回は許すけど、次にトラブルがあったら、絶対に馬車から出るなよ」
「どういう事?」
「どんな相手かわからないんだから危険だろ。何を考えてんだ」
「ごめんなさい。軽率な行動だったわよね…。だけど、相手がハック様だったし、ラルがいるとわかっていたから出たのもあるのよ?」
「俺がいても駄目な時は駄目だ」
「わかりました。反省してます」
ぺこりと一礼してから、ラルに尋ねる。
「本気で警察の女性をすすめたの?」
「まあな。ただ、この国は女性の警察官はほとんどいないし、いたとしても正義感の強い女性が多いから、あんな男にはひっかからないとわかってて言った。逆に痛い目にあうと思うぜ」
ラルが答えてくれた通り、ハック様は警察に連れて行かれ、貴族の令嬢に迷惑行為をしたとして、留置所に入れられた。
その際、取り調べをする人が男性だったため、「女性じゃないと話さない」と言ったらしく、その警察署には女性が1人しかいなかった為、その女性が対応したそうだった。
気を良くしたハック様は女性を口説きにかかったけれど相手にされず、別の女性を呼べと文句を言ったらしかった。
もちろん、そんなワガママをきいてくれるはずもなく、女性が引き続き、取り調べをしようとすると、その女性に罵声を浴びせてつかみかかったらしく、罪が重くなったのだそう。
ハック様の家族は本当に彼を見捨ててしまったらしく、保釈金もないので、彼は刑務所に入れられる事になった。
彼が刑務所から出る頃には、リリンラ様も彼の子を生んでいると思われる。
彼は浮気をする事ですべてを失った。
婚約者も友人も、そして家族も。
浮気相手には切り捨てられ、友人も呆れてしまい、彼を見捨てたから、ハック様は一人ぼっちだった。
日にちが経ち、刑務所にいれられたハック様は、かなり辛い思いをしたのか、私に手紙を送ってきた。
自分の言った事やした事が最低な行為だった事を謝ってくれた。
手紙に返事を出すかは、今、迷っているところ。
そして、リリンラ様の方はというと――。
「冷たい事って…、私だって言いたい事を言わせてもらっただけよ。あなただって、散々、自分の好きな様に言いたい事を言っていたでしょう?」
婚約破棄された時はショックの方が大きくて、言いたい事は言えなかった。
今はもう冷静だし、私が悪いわけだけではない事もわかっている。
浮気される原因を私が作っていたんだとしても、浮気をしてもいい理由にはならない。
それに、髪の色に関しては、最初から言ってほしかったし、何より浮気しておいて、あんなに偉そうな婚約破棄はないと思うわ。
「しょうがないじゃないか! 僕には君がいると思っていたから安心できていたのに!」
「安心…?」
「そうだよ! 僕には帰るところがあるとわかっていたから浮気した。でも、色々とあって、君以上に素敵な人なんていないという事がわかったよ!」
「ふざけないで! あなた、自分の浮気理由をなんて言ったか覚えてないの!?」
「覚えている…ような、ないような…」
「覚えてないんじゃない! 信じられないわ! あなたは私の外見が気に入らないって言ってたの! 自分の髪色と瞳の色まで否定されて、私が許すと思うの?」
今までは、ハック様にこんな強い口調で言い返した事はなかった。
だって、嫌われたくなかったから。
でも、今は違う。
この人に嫌われたってかまわない。
ハック様は泣きそうな顔になって訴えてくる。
「君が許してくれなかったら…、僕は、どうなるんだ…」
「そんな事を私に聞かないで! とにかく、迷惑行為で警察に捕まえてもらうわ。留置所でこれからの事を考えたらどう? その身なりじゃ、女性には相手にされないから、しっかり考える時間はあるんじゃないかしら?」
「留置所に行ったら、僕は救われるのかな…?」
救われる…?
そんな事を聞かれても困るわ。
私が言葉に詰まっていると、ラルが代わりに答えてくれる。
「これは個人の意見だが、救われると思うぞ。警察には女性だっているんだから、良い出会いがあるといいな」
「……そうか。そうだよな…。アドバイスをありがとう」
本気でそんな事があると信じているのかしら…?
ラルの方を見ると、今は何も言うなといった感じで私を見たので、首を縦に振る。
すると、ハック様が尋ねてくる。
「アンジェ…、本当にいいんだな?」
「……どういう事?」
「僕はもう戻らないよ。僕を待ってくれている女性の所に行くから」
「今だって、私の所に来る必要はなかったのよ? もしかして、警察に捕まえられたくて、ここに来たの?」
「ち、違うよ…。君とはあんな別れ方をしたから…」
「気にしなくていいわ。元気でね。もう、あなたとは何も関わりはないわ」
「……ありがとう、君も元気で」
ハック様は騎士に両脇をつかまれて歩いていく。
その背中を見送っていると、ラルが近付いてきた。
「今回は許すけど、次にトラブルがあったら、絶対に馬車から出るなよ」
「どういう事?」
「どんな相手かわからないんだから危険だろ。何を考えてんだ」
「ごめんなさい。軽率な行動だったわよね…。だけど、相手がハック様だったし、ラルがいるとわかっていたから出たのもあるのよ?」
「俺がいても駄目な時は駄目だ」
「わかりました。反省してます」
ぺこりと一礼してから、ラルに尋ねる。
「本気で警察の女性をすすめたの?」
「まあな。ただ、この国は女性の警察官はほとんどいないし、いたとしても正義感の強い女性が多いから、あんな男にはひっかからないとわかってて言った。逆に痛い目にあうと思うぜ」
ラルが答えてくれた通り、ハック様は警察に連れて行かれ、貴族の令嬢に迷惑行為をしたとして、留置所に入れられた。
その際、取り調べをする人が男性だったため、「女性じゃないと話さない」と言ったらしく、その警察署には女性が1人しかいなかった為、その女性が対応したそうだった。
気を良くしたハック様は女性を口説きにかかったけれど相手にされず、別の女性を呼べと文句を言ったらしかった。
もちろん、そんなワガママをきいてくれるはずもなく、女性が引き続き、取り調べをしようとすると、その女性に罵声を浴びせてつかみかかったらしく、罪が重くなったのだそう。
ハック様の家族は本当に彼を見捨ててしまったらしく、保釈金もないので、彼は刑務所に入れられる事になった。
彼が刑務所から出る頃には、リリンラ様も彼の子を生んでいると思われる。
彼は浮気をする事ですべてを失った。
婚約者も友人も、そして家族も。
浮気相手には切り捨てられ、友人も呆れてしまい、彼を見捨てたから、ハック様は一人ぼっちだった。
日にちが経ち、刑務所にいれられたハック様は、かなり辛い思いをしたのか、私に手紙を送ってきた。
自分の言った事やした事が最低な行為だった事を謝ってくれた。
手紙に返事を出すかは、今、迷っているところ。
そして、リリンラ様の方はというと――。