好きな事を言うのは勝手ですが、後悔するのはあなたです
3 浮気された方が悪い?
家に帰り、お父様達に事情を話すと、それはもう、お父様もお母様もご立腹だった。
すぐにハックの家に連絡を入れると言って、お父様が動き出そうとしたと同時に、エルビー伯爵が約束もなく我が家に押し掛けてきた。
お父様が文句を言おうと応接間に案内すると エルビー伯爵は、床に膝を付かれて謝られた。
ハックから話を聞いたらしく、本当に申し訳ないと謝ってくださった。
本人を連れてきていないのは、ハックが浮気させた私が悪いと言っているからかもしれない。
そんな人を連れてきても謝ってもらった気にならないから、来てくれなくて本当に良かった。
エルビー伯爵は改めて、ハックを連れて謝りに来ると仰ったけれど、もう会いたくないとお断りした。
それと、エルビー家の方から婚約破棄をするけれど、慰謝料はエルビー家が払うと常識的な発言もしてくださった。
「本当にハックは、浮気していたんですね…」
どこかで、嘘であってほしいという気持ちがあった。
けれど、エルビー伯爵がそんな淡い期待を打ち砕いてくれた。
「妊娠させてしまったという女性の話を聞いたんだが、伯爵家の令嬢で、君と同じクラスだと言っていた」
「わ、私と同じクラス…?」
伯爵家の令嬢は同じクラスには2人いる。
その内の1人は大人しそうな人で挨拶はするけれど、ほとんど話をした事はない。
もう1人が問題で、私のクラスには伯爵令嬢よりも上の貴族がいないから、そのせいで誰も逆らうことのできないワガママ令嬢がいる。
その人じゃなければいいんだけれど…。
「リリンラ・コッポプ伯爵令嬢だというんだけれど、知っているかい?」
「クラスメイトですから…、名前と顔は一致します…」
最悪だわ。
ワガママ令嬢の方だった。
後妻の連れ子で平民時代が長い事もあり、態度や言葉遣いが悪く、貴族の令嬢の間では好かれていない。
人の婚約者を奪っては捨てるという常習犯だという事でも有名な方だわ。
もちろん、それは平民だったからというわけではないのでしょうけど…。
さすがに最近はそれが知れ渡ってきたから、学園内で引っかかる男性は少なくなってきたと聞いている。
それに、子供ができたなんて話は今まで聞いたことがなかった。
今までは学生が相手だったから…?
それとも、ハックが本命…?
「コッポプ伯爵令嬢は、ハック様に婚約者がいる事を知っていたんですか?」
「知っていたはずだよ。ハックはそれでも良いと言ってくれた人達と遊んでいたようだから」
「人達……」
また、ショックを受ける話を聞いてしまった。
ハックは、ううん。
ハック様はリリンラ様以外とも浮気していたという事なのね…。
「本当に申し訳ない!」
酷い顔をしていた様で、エルビー伯爵はまた額を床につけた。
「アンジェ、お前は部屋に戻りなさい」
お父様に促されて、フラフラとした足取りで応接室を出ると、ラルが廊下に立っていた。
ラルは私より1つ年上で、母がメイド、父が専属魔道士として、私の家に雇われている。
その都合で、ラルと私は幼い頃からずっと一緒だった。
ハックという婚約者が出来てからは、ラルは休みの日は私の護衛になってくれる様になった。
魔道士は世界的に見ても少なく、普通なら子爵家の人間が雇える様な人達じゃない。
けれど、管理されたくないラルのお父様は、一家が暮らしていける金額の給料と、命令しない事を条件に私の家で働いてくれる事になった。
嫌な事はやりたくないという事らしいのだけれど、お父様が依頼した事を断られた事はないんだそうから、ワガママな人というわけでもないのよね。
職人気質みたいなものかしら?
「おい、何を突っ立ってるんだよ。行くぞ」
「屋敷の中なんだから、そこまで過保護にしなくても大丈夫よ。自分の部屋にくらい1人で戻れるわ」
「文句言うな」
「心配しなくても浮気されて婚約破棄されたからって死んだりなんかしないわ」
ショックなのは確かだし、彼を好きだった事も嘘じゃない。
けれど、命を落とすほどでもなかった。
だから、浮気されたのかしら…。
って、そんなの理由にはならないわ!
ああ、でも…。
「私がちゃんとしていたら、彼は浮気しなかったのよね…」
「お前なあ…」
ラルは大きく息を吐くと続ける。
「たとえ、お前になにか原因があったとしても浮気をしていい事にはならねぇんだよ。それにそういう奴は、お前がちゃんとしていても浮気はする!」
「そ、そうね。そうよね。弱音ばかり吐いてごめんなさい」
「結婚前に別れられて良かったじゃないか。お前が出来る事は、あいつよりも幸せになる事だろ! 踏み台にしてやればいいんだよ」
「ありがとう、ラル」
ラルなりに励ましてくれているのがわかって、少し明るい気持ちになった。
ただ、このまま婚約破棄されて、さあ気持ちを切り替えて終わりというわけではなかった。
だって、浮気相手は同じクラスの人、嫌でも顔を合わせないといけないんだもの…。
次の日、教室に入ると、コッポプ伯爵令嬢が金色の長い髪を揺らしながら、満面の笑みを浮かべて近付いてくると言った。
「ごめんなさいね。悪いと思っているわ。だけど、簡単に奪われてしまう、あなたも悪いのよ? 綺麗になる為の努力を怠ったから悪いの」
どうして、この人は人から婚約者を奪ったのに、平気な顔をして、そんな事を言えるのかしら…。
すぐにハックの家に連絡を入れると言って、お父様が動き出そうとしたと同時に、エルビー伯爵が約束もなく我が家に押し掛けてきた。
お父様が文句を言おうと応接間に案内すると エルビー伯爵は、床に膝を付かれて謝られた。
ハックから話を聞いたらしく、本当に申し訳ないと謝ってくださった。
本人を連れてきていないのは、ハックが浮気させた私が悪いと言っているからかもしれない。
そんな人を連れてきても謝ってもらった気にならないから、来てくれなくて本当に良かった。
エルビー伯爵は改めて、ハックを連れて謝りに来ると仰ったけれど、もう会いたくないとお断りした。
それと、エルビー家の方から婚約破棄をするけれど、慰謝料はエルビー家が払うと常識的な発言もしてくださった。
「本当にハックは、浮気していたんですね…」
どこかで、嘘であってほしいという気持ちがあった。
けれど、エルビー伯爵がそんな淡い期待を打ち砕いてくれた。
「妊娠させてしまったという女性の話を聞いたんだが、伯爵家の令嬢で、君と同じクラスだと言っていた」
「わ、私と同じクラス…?」
伯爵家の令嬢は同じクラスには2人いる。
その内の1人は大人しそうな人で挨拶はするけれど、ほとんど話をした事はない。
もう1人が問題で、私のクラスには伯爵令嬢よりも上の貴族がいないから、そのせいで誰も逆らうことのできないワガママ令嬢がいる。
その人じゃなければいいんだけれど…。
「リリンラ・コッポプ伯爵令嬢だというんだけれど、知っているかい?」
「クラスメイトですから…、名前と顔は一致します…」
最悪だわ。
ワガママ令嬢の方だった。
後妻の連れ子で平民時代が長い事もあり、態度や言葉遣いが悪く、貴族の令嬢の間では好かれていない。
人の婚約者を奪っては捨てるという常習犯だという事でも有名な方だわ。
もちろん、それは平民だったからというわけではないのでしょうけど…。
さすがに最近はそれが知れ渡ってきたから、学園内で引っかかる男性は少なくなってきたと聞いている。
それに、子供ができたなんて話は今まで聞いたことがなかった。
今までは学生が相手だったから…?
それとも、ハックが本命…?
「コッポプ伯爵令嬢は、ハック様に婚約者がいる事を知っていたんですか?」
「知っていたはずだよ。ハックはそれでも良いと言ってくれた人達と遊んでいたようだから」
「人達……」
また、ショックを受ける話を聞いてしまった。
ハックは、ううん。
ハック様はリリンラ様以外とも浮気していたという事なのね…。
「本当に申し訳ない!」
酷い顔をしていた様で、エルビー伯爵はまた額を床につけた。
「アンジェ、お前は部屋に戻りなさい」
お父様に促されて、フラフラとした足取りで応接室を出ると、ラルが廊下に立っていた。
ラルは私より1つ年上で、母がメイド、父が専属魔道士として、私の家に雇われている。
その都合で、ラルと私は幼い頃からずっと一緒だった。
ハックという婚約者が出来てからは、ラルは休みの日は私の護衛になってくれる様になった。
魔道士は世界的に見ても少なく、普通なら子爵家の人間が雇える様な人達じゃない。
けれど、管理されたくないラルのお父様は、一家が暮らしていける金額の給料と、命令しない事を条件に私の家で働いてくれる事になった。
嫌な事はやりたくないという事らしいのだけれど、お父様が依頼した事を断られた事はないんだそうから、ワガママな人というわけでもないのよね。
職人気質みたいなものかしら?
「おい、何を突っ立ってるんだよ。行くぞ」
「屋敷の中なんだから、そこまで過保護にしなくても大丈夫よ。自分の部屋にくらい1人で戻れるわ」
「文句言うな」
「心配しなくても浮気されて婚約破棄されたからって死んだりなんかしないわ」
ショックなのは確かだし、彼を好きだった事も嘘じゃない。
けれど、命を落とすほどでもなかった。
だから、浮気されたのかしら…。
って、そんなの理由にはならないわ!
ああ、でも…。
「私がちゃんとしていたら、彼は浮気しなかったのよね…」
「お前なあ…」
ラルは大きく息を吐くと続ける。
「たとえ、お前になにか原因があったとしても浮気をしていい事にはならねぇんだよ。それにそういう奴は、お前がちゃんとしていても浮気はする!」
「そ、そうね。そうよね。弱音ばかり吐いてごめんなさい」
「結婚前に別れられて良かったじゃないか。お前が出来る事は、あいつよりも幸せになる事だろ! 踏み台にしてやればいいんだよ」
「ありがとう、ラル」
ラルなりに励ましてくれているのがわかって、少し明るい気持ちになった。
ただ、このまま婚約破棄されて、さあ気持ちを切り替えて終わりというわけではなかった。
だって、浮気相手は同じクラスの人、嫌でも顔を合わせないといけないんだもの…。
次の日、教室に入ると、コッポプ伯爵令嬢が金色の長い髪を揺らしながら、満面の笑みを浮かべて近付いてくると言った。
「ごめんなさいね。悪いと思っているわ。だけど、簡単に奪われてしまう、あなたも悪いのよ? 綺麗になる為の努力を怠ったから悪いの」
どうして、この人は人から婚約者を奪ったのに、平気な顔をして、そんな事を言えるのかしら…。