好きな事を言うのは勝手ですが、後悔するのはあなたです
5 全ての人ではないわよね?
今日のパーティーは、元々はハック様と出席予定だったけれど、婚約破棄されてしまった為、私1人で出るか、もしくはお父様と一緒に出席しようかと悩んでいると、ラルが一緒に行ってくれる事になった。
魔道士は功績をあげると、爵位をもらえる時があって、なんと、ラルも男爵の爵位を持っているという事が、このパーティーに出席する時になってわかった。
受付を済ませ、今日の主催者の人への挨拶を終えてから、黒の燕尾服姿のラルに不満をぶつける。
「どうして今まで教えてくれなかったの」
「別に教えなくても支障なかっただろ」
「それはまあ、そうなんだけど。ラルって、自分の事をあまり話してくれないわよね」
「婚約者のいる相手に自分の話をしたって意味がないだろ」
「ラルは友達なんだから、友達の話はちゃんと知りたいのよ」
「男女間の友情って成立しないって、よく言うだろ」
「成立するわよ! 私とラルが良い見本じゃない」
「……そうだな」
ラルは小さく息を吐くと、会場内を見回す。
何か言いたげな感じだけど、話してくれるつもりはないみたい。
今日はハック様はリリンラ様のパートナーとして出ているみたいだった。
ただ、リリンラ様はお腹も大きくなってきたから来ていないとの事。
だから、正確にいえば、彼は1人でパーティーに来ている。
社交場は情報交換の場でもあるから、男性だけで来ている事はおかしくないし、リリンラ様と上手くいっているのなら良かったわ。
って、こういう事を言うと、またラルにお人好し、って言われるから口にはしない。
でも、人の不幸を願うよりも幸せを願う方が自分の精神的にも良いのよね。
といっても、これは友人が言っていた言葉で、浮気されてすぐは、そんな事は全く思えなかった。
でも、落ち着いてくると、あんな人と別れられて良かったと、そう思い始めた。
ハック様は私の運命の人ではなかったというだけ。
今日のパーティーにハック様が来るという事を知った時は、顔を合わせたくないから、欠席しようかとも迷ったけど、周りから私は悪くないんだから行かないのはおかしいし、相手が来るのを遠慮すべき、と言われたから来てみた。
それに、婚約破棄されても余裕のところを見せてあげるんだから!
そんな事を、ぼんやりと考えていると、ラルが話しかけてくる。
「今日の目的は?」
「ここのお食事、美味しいって有名なの。せっかくだし食べて帰らない??」
「食い意地張ってるなら元気な証拠だな」
「元気がないと心配するくせに」
「してねぇ」
「否定しても知ってるから」
ふふ、と笑うと、ラルは不満げな顔をしたけれど、言い返してはこなかった。
ラルはお兄ちゃんぶるけど、子供っぽいとこがあるのよね。
ふと、視線を感じてそちらに目をやると、2人の女性がラルを見ているのがわかった。
まるで一目惚れしたみたいに、口を開けて、ラルの動きを目で追っている。
ラルは顔も整ってるものね。
魔道士は貴族の間でも人気。
魔道士の子供は魔力を持って生まれる子が多いから、貴族も婿や嫁に欲しがると聞いた事がある。
ラルはパートナーらしき人のいない、複数の女性にかなり見られているのに、そんな女性達の方には全く目を向けなくて、興味がないといった感じだった。
「あれ、お前の友達じゃねぇの?」
会場の隅でラルと一緒に軽食を食べていると、ラルが私の背後の方に顔を向けて聞いてきた。
だから、食べる手を止めて慌てて後ろを振り返った。
そこには、泣いているミーファと、ミーファの友人なのか、私の知らない女性がいて、泣いているミーファを慰めているみたいだった。
「ちょっと行ってきてもいい?」
「俺も近くまで一緒に行く」
「ありがとう」
持っていたお皿などを、近くにいたボーイに渡し、足元まであるドレスだから歩きづらいけれど、何とか人をすり抜けてミーファのところまで行くと、私に気が付いたミーファが走り寄ってきて泣きながらしがみついてきた。
「アンジェ! 信じられない、あの男!」
「ど、どうしたの? あの男って…?」
「私の婚約者よ! 姿が見えなくなったと思って中庭の方に探しに行ったら…」
「え? まさか…」
「あ、ああ…。ううん。女性と密会していたわけじゃないの。他の男性と下品な話をしていて…。私の事も、ただの胸だけの女…って、政略結婚じゃなきゃ…、婚約者になんか選ばないって…!」
またポロポロと涙を流しはじめたミーファに言う。
「信じられない! ねぇ、ミーファ。今日、ラルと一緒に来てるの! ラルに懲らしめてもらいましょう!」
「そ…、それはありがたいけど、あなたはここにいてくれる?」
「……どうして?」
ミーファは口に出すか出さないか、とても迷っている感じで、涙を目に溜めて私を見つめてくる。
すると、声が聞こえていたのか、少し離れた場所で見守ってくれていたラルが尋ねる。
「話をしていた相手はハックか?」
「……」
ミーファが否定はせずに、気遣う様に私の方を見た。
ハック様はミーファの婚約者とどんな話をしてたの?
男性同士の会話って、そんなのが当たり前なの?
でも、ラルはそんな話をしそうには見えないし、全ての人ではないわよね?
何にしても、ミーファを泣かせるなんて許せない!
「どこにいた?」
私が何か言う前にラルがミーファに尋ねると、彼女は小さな声で答えた。
「……中庭に、噴水があるんですけど…」
「わかった。お前らはここにいろ。動くなよ」
「え!? ラル!?」
ラルは私の呼び止める声など聞かずに、中庭に続く扉に向かって歩いていってしまった。
魔道士は功績をあげると、爵位をもらえる時があって、なんと、ラルも男爵の爵位を持っているという事が、このパーティーに出席する時になってわかった。
受付を済ませ、今日の主催者の人への挨拶を終えてから、黒の燕尾服姿のラルに不満をぶつける。
「どうして今まで教えてくれなかったの」
「別に教えなくても支障なかっただろ」
「それはまあ、そうなんだけど。ラルって、自分の事をあまり話してくれないわよね」
「婚約者のいる相手に自分の話をしたって意味がないだろ」
「ラルは友達なんだから、友達の話はちゃんと知りたいのよ」
「男女間の友情って成立しないって、よく言うだろ」
「成立するわよ! 私とラルが良い見本じゃない」
「……そうだな」
ラルは小さく息を吐くと、会場内を見回す。
何か言いたげな感じだけど、話してくれるつもりはないみたい。
今日はハック様はリリンラ様のパートナーとして出ているみたいだった。
ただ、リリンラ様はお腹も大きくなってきたから来ていないとの事。
だから、正確にいえば、彼は1人でパーティーに来ている。
社交場は情報交換の場でもあるから、男性だけで来ている事はおかしくないし、リリンラ様と上手くいっているのなら良かったわ。
って、こういう事を言うと、またラルにお人好し、って言われるから口にはしない。
でも、人の不幸を願うよりも幸せを願う方が自分の精神的にも良いのよね。
といっても、これは友人が言っていた言葉で、浮気されてすぐは、そんな事は全く思えなかった。
でも、落ち着いてくると、あんな人と別れられて良かったと、そう思い始めた。
ハック様は私の運命の人ではなかったというだけ。
今日のパーティーにハック様が来るという事を知った時は、顔を合わせたくないから、欠席しようかとも迷ったけど、周りから私は悪くないんだから行かないのはおかしいし、相手が来るのを遠慮すべき、と言われたから来てみた。
それに、婚約破棄されても余裕のところを見せてあげるんだから!
そんな事を、ぼんやりと考えていると、ラルが話しかけてくる。
「今日の目的は?」
「ここのお食事、美味しいって有名なの。せっかくだし食べて帰らない??」
「食い意地張ってるなら元気な証拠だな」
「元気がないと心配するくせに」
「してねぇ」
「否定しても知ってるから」
ふふ、と笑うと、ラルは不満げな顔をしたけれど、言い返してはこなかった。
ラルはお兄ちゃんぶるけど、子供っぽいとこがあるのよね。
ふと、視線を感じてそちらに目をやると、2人の女性がラルを見ているのがわかった。
まるで一目惚れしたみたいに、口を開けて、ラルの動きを目で追っている。
ラルは顔も整ってるものね。
魔道士は貴族の間でも人気。
魔道士の子供は魔力を持って生まれる子が多いから、貴族も婿や嫁に欲しがると聞いた事がある。
ラルはパートナーらしき人のいない、複数の女性にかなり見られているのに、そんな女性達の方には全く目を向けなくて、興味がないといった感じだった。
「あれ、お前の友達じゃねぇの?」
会場の隅でラルと一緒に軽食を食べていると、ラルが私の背後の方に顔を向けて聞いてきた。
だから、食べる手を止めて慌てて後ろを振り返った。
そこには、泣いているミーファと、ミーファの友人なのか、私の知らない女性がいて、泣いているミーファを慰めているみたいだった。
「ちょっと行ってきてもいい?」
「俺も近くまで一緒に行く」
「ありがとう」
持っていたお皿などを、近くにいたボーイに渡し、足元まであるドレスだから歩きづらいけれど、何とか人をすり抜けてミーファのところまで行くと、私に気が付いたミーファが走り寄ってきて泣きながらしがみついてきた。
「アンジェ! 信じられない、あの男!」
「ど、どうしたの? あの男って…?」
「私の婚約者よ! 姿が見えなくなったと思って中庭の方に探しに行ったら…」
「え? まさか…」
「あ、ああ…。ううん。女性と密会していたわけじゃないの。他の男性と下品な話をしていて…。私の事も、ただの胸だけの女…って、政略結婚じゃなきゃ…、婚約者になんか選ばないって…!」
またポロポロと涙を流しはじめたミーファに言う。
「信じられない! ねぇ、ミーファ。今日、ラルと一緒に来てるの! ラルに懲らしめてもらいましょう!」
「そ…、それはありがたいけど、あなたはここにいてくれる?」
「……どうして?」
ミーファは口に出すか出さないか、とても迷っている感じで、涙を目に溜めて私を見つめてくる。
すると、声が聞こえていたのか、少し離れた場所で見守ってくれていたラルが尋ねる。
「話をしていた相手はハックか?」
「……」
ミーファが否定はせずに、気遣う様に私の方を見た。
ハック様はミーファの婚約者とどんな話をしてたの?
男性同士の会話って、そんなのが当たり前なの?
でも、ラルはそんな話をしそうには見えないし、全ての人ではないわよね?
何にしても、ミーファを泣かせるなんて許せない!
「どこにいた?」
私が何か言う前にラルがミーファに尋ねると、彼女は小さな声で答えた。
「……中庭に、噴水があるんですけど…」
「わかった。お前らはここにいろ。動くなよ」
「え!? ラル!?」
ラルは私の呼び止める声など聞かずに、中庭に続く扉に向かって歩いていってしまった。