ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
「お姉様に家業を継いでもらえば、私は生涯独身で済むわ!」
「てめぇが家に残るなら、姉貴は婚約者の家に(とつ)ぐって言ってたろ。てめぇがどっかの家に嫁ぐなら、アクシーの家は俺が継いでやるよ」
「お兄様の奥様では、変身魔法を使役する力が弱まってしまうわ」

 お兄様にはアクシーの血が流れている。お兄様とまだ見ぬ奥様との間に女児が生まれたとしても、私やお姉様の子どもよりは変身魔法の効果が劣るはず。
 私が継ぐのが適任なのに、どうしてお兄様は無理に第ニ皇子との婚約を迫るのかしら?嫌がらせにしても、限度ってものがあるわ。いい加減にしてほしい。

「姉貴かてめぇの娘を、養女にすればいいだけじゃねぇか」
「その場合、私は誰と婚姻しているの?」
「第二皇子」
「私と第二皇子が婚姻した場合、生まれた子どもは王家の血を引く皇女よ!?伯爵家の養女として、お兄様に預けるわけがないでしょう!」
「まだ見ぬ俺の息子と、婚約させてもいいぜ」
「妄想を語るのもいい加減にして!」

 まだ見ぬ私達兄妹の間に生まれる子どもたちを夢見て議論するなど、無駄でしかないわ。
 お兄様は私が第二皇子と婚姻することを前提に話を進めるし、これ以上話していてもいいことなど何もない。
 私は胸の前で腕を組み拒絶のポーズを取ると、お兄様から目を逸らした。

「明日が楽しみだな」
「明日が来なければいいのに」
「今すぐ馬車の上から、突き飛ばしてやってもいいぜ」
「私を殺す気!?」

 明日が来なくて良いのにと言ったのは私だけれど、走行中の馬車から突き飛ばしてほしいなんて頼んだことはないわよ。
 私はお兄様に怒鳴り散らすと、これ以上の対話を拒否した。
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