ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
「マリスティ皇女殿下」

 アンバーはマリスティと身長を合わせるためしゃがむと、会話を試みる。
 マリスティはアンバーに抱き上げて欲しいとお願いしているようだが、寡黙なアンバーは難しい顔でぼうっとマリスティの姿を見つめるだけだ。

「マリスティはアンバーに任せて、行っておいで」

 アンバーはディミオの影武者として、長年従者を勤めている。
 同じ衣服を纏っていれば、見分けがつかないほどそっくりだ。

(マリスティの好みに合致する人物は、ディミオを除けばアンバーだけなのよね……)

 年の差さえ目を瞑れば、これほどマリスティの相手に適任な人物はいないだろう。
 ミスティナはマリスティをアンバーに任せ、ディミオに見守って貰うと決めた。

「ええ。ありがとう、ディミオ」

 マリスティが生まれてから、ミスティナは堂々と王城でアクシーの代行業を始めた。
 ディミオ公認の代行業は大好評で、ミスティナに救いを求める迷える子羊達は、絶えず王城へやってくる。

「行ってらっしゃい、ミスティナ」

 ミスティナは愛する人に別れを告げ、ツカエミヤと共に迷える子羊が待つ部屋に向かった。

 愛する家族と幸せに暮らすミスティナは、昔ほど代行業に入れ込むことはない。
 自ら声を掛け、積極的に助けることなどしなくなったが──直接助けを求められたら、無下には出来ないのは、長年ミスティナがカフシー家で生きてきた習慣だ。

 どうしようもならないだろう。

「ごきげんよう。私は神の代行者。貴方の代わりに、悪しき者に天罰を下す──星空の女神よ」

 迷える子羊を救うため。
 今日もまた、ミスティナの代行業が始まった──。
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