ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
「どうしたんだ。ミスティナ。変態など……淑女の口から、紡がれるべき言葉ではないはずだが……」
「お父様だってご存知のはずよ。茶会の処刑人、アンジェラ・ラヘルバ公爵令嬢の悪行を。アレは自分よりも立場が下の人間を虐げ、興奮している変態なのよ!」
「アホか。公爵令嬢を変態呼ばわりする馬鹿がどこにいるんだよ」
「ここにいるじゃない。目を背けないで」
「わたしは育て方を間違ったのかしら……?」

 お父様は目頭を押さえてうなだれ、お兄様とお姉様、お母様の3人は顔を見合わせ、一斉にため息をつく。
 悪人をどう呼ぼうが私の勝手じゃない。
 本人の耳に入るようなことがないよう、気をつければいいだけだわ。

「私はアンジェラ・ラヘルバに罪を償わせる為、ラヘルバ公爵家に潜入するわ!お父様、お兄様。私に協力しなさい!」
「ロスメルの件が終わったばっかだってのに、もう次の案件をこなすのかよ。魔力だって回復しきれてねぇくせに」
「そ、それは……これからどうにかするわ」

 そうだ、魔力回復。お兄様に指摘されるまですっかり忘れていたけれど、私達の身に秘めたる魔力には、魔力の限界量が各々に設定されている。
 私の場合は魔力で満ち溢れていれば、変身魔法の持続可能時間は24時間。
 お姉様は半日。お母様は三時間程度ね。
 お母様のように魔力の限界量が少ない親から、魔力の限界量が大きな娘が生まれることは稀なのに……。
 私は末娘だけれど、魔力の限界量だけで言えは、誰よりも尊重されるべき存在だわ。
 第二皇子に嫁ぐよりも一生独身で家業に専念した方が、カフシー家に貢献できるって所を知らしめなくちゃ!

「そうだわ。魔法回復薬を飲めばいいのよ!」

 失った魔力を回復する方法は、睡眠や食事を取るのがスタンダード。時間を掛けてリラックスした状態で過ごせば、個人差はあれど自然に魔力は回復する。

 時間を掛けてゆっくりなんて待ってられない人向けに、アルフォンス公爵家が主体となって開発を行う魔法回復薬がこの国では流通しているのよね。
 アルフォンスの末娘、ロスメルと親友の私は、魔法回復薬を定期的に買い取っているから、カフシーの家には木箱に収納された回復魔法薬が山程保管されているの。
 私は木箱の中から魔法回復薬を三本取り出すと、一本をお兄様へ渡して、二本の蓋を開けてがぶ飲みする。
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