ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
「アンジェラ様!ドレスの裾が!」

 変態令嬢御一行様の一人が、悲鳴を上げたのは。
 謝罪をしようとしていた私は、人知れずニヤリと口元を緩ませ、恐る恐る瞳を開く。

「な、なっ、なんてこと……!?」

 私の小細工は、しっかりと実を結んだようね。なけなしの変身魔法でドレスを変質させてたのが、功を成す。
 変態令嬢のドレスは私の変身魔法によって、水で溶ける素材に変化させておいたのよね。
 私が不注意と称して変態令嬢に水をぶち撒ければ、変態令嬢は文字通り、第二皇子の前で所々ドレスの布が破けた姿を披露することになる。

 弱者を屈服させて愉悦に浸る変態令嬢には、そうした姿がよくお似合いだわ。

「どうなっているの!?ツカエミヤ!一番高級なドレスを着せろと言ったのに、一番みすぼらしいドレスをわたくしに着せたわね!?」
「ご、誤解です……!」
「一番高級なドレスが、こ、このように破けるわけがないでしょう!?」

 顔を真っ赤にして激昂する変態令嬢は、所々水に濡れて破けたドレスを手で隠すことすらせず、怒りで我を忘れて私へ怒鳴り散らした。
 茶会の処刑人、本領発揮ね。
 沈黙の皇子だって、目を丸くしているわ。従者は眉を顰めてドン引きしてる。
 今にも平手打ち飛んできそうな程の激昂っぷりに身構えていれば、変態令嬢は思いがけない行動を取った。

「口答えするな!」

 変態令嬢は椅子から立ち上がると、先程まで座っていた木製椅子の足を両手で持ち上げると、勢いよく振りかぶった。
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