ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
お兄様はうんざりした様子で、教会の出入り口を蹴りつける。
その表情は、恐ろしく不機嫌そう。
「んだよ」
お兄様は地獄耳の魔法が使える侍女など必要ないと、強く私に言い聞かせた。
私が探すよりも先に、地獄耳の魔法が使えるツカエミヤがやってきたなら。
何が何でも蹴落としたいと考えているに違いないわ。
ツカエミヤを侍女として雇うには、お兄様も唸らせるような、魔法の使い手である所を証明して貰わなくては。
「お兄様は確か、半径1kmまでだったら聞こえるのよね」
「てめぇの声だったら、どこにいたって聞き漏らさねぇよ」
「ツカエミヤ」
「ひゃい……!」
「お兄様の代わりを務めてもらうならば、最低でも半径1km先の会話を、一言一句聞き漏らさないような力を持ってなければ困るわ。どうかしら。出来る?」
「も、もちろんです……!」
半径1km先から聞こえる声を、一言一句聞き漏らすことなく認識する。
それは簡単なことではないわ。お兄様にとって私の声は、生まれてからずっと馴染みのある声だけれど──ツカエミヤにとってはそうじゃない。
私が変身魔法を使えば外見と声は哀れな子羊になるのだから、私の声を記憶していればいいとは限らないけれど──私の声でテストしてみて考えるのは、きっと悪いことではないはずよ。
「じゃあ、今から15分以内に左右へ別れて。半径1kmギリギリの場所で待機しなさい。15分後に私の声が聞こえてきたら、ここまで戻ってきて。聞こえた言葉を発表する」
「わ、わかりました……!」
私は祭司にお願いをして、地図を持ってきて貰った。
領地内の地理に詳しいお兄様なら、口頭で指示をすれば伝わるけれど、ツカエミヤはあまり土地勘がない。地図がないと迷子になってしまうかもれないわ。
私は半径1kmの円を書くと、ペンで印をつけた。
「お兄様はここ。中央病院の裏路地辺り」
「おう」
「ツカエミヤは……大広場にしましょう。剣のモニュメントがあるから、その前に立つこと。分からなけれは領民に聞けばいいわ。教えてくれるから」
「わ、わかりました……!」
迷わず歩けば7分前後で到着するけれど、15分でツカエミヤが辿り着けるか心配だわ……。
私は手を叩き、緊張の面持ちで地図を握りしめたツカエミヤとダルそうに歩くお兄様を見送った。
その表情は、恐ろしく不機嫌そう。
「んだよ」
お兄様は地獄耳の魔法が使える侍女など必要ないと、強く私に言い聞かせた。
私が探すよりも先に、地獄耳の魔法が使えるツカエミヤがやってきたなら。
何が何でも蹴落としたいと考えているに違いないわ。
ツカエミヤを侍女として雇うには、お兄様も唸らせるような、魔法の使い手である所を証明して貰わなくては。
「お兄様は確か、半径1kmまでだったら聞こえるのよね」
「てめぇの声だったら、どこにいたって聞き漏らさねぇよ」
「ツカエミヤ」
「ひゃい……!」
「お兄様の代わりを務めてもらうならば、最低でも半径1km先の会話を、一言一句聞き漏らさないような力を持ってなければ困るわ。どうかしら。出来る?」
「も、もちろんです……!」
半径1km先から聞こえる声を、一言一句聞き漏らすことなく認識する。
それは簡単なことではないわ。お兄様にとって私の声は、生まれてからずっと馴染みのある声だけれど──ツカエミヤにとってはそうじゃない。
私が変身魔法を使えば外見と声は哀れな子羊になるのだから、私の声を記憶していればいいとは限らないけれど──私の声でテストしてみて考えるのは、きっと悪いことではないはずよ。
「じゃあ、今から15分以内に左右へ別れて。半径1kmギリギリの場所で待機しなさい。15分後に私の声が聞こえてきたら、ここまで戻ってきて。聞こえた言葉を発表する」
「わ、わかりました……!」
私は祭司にお願いをして、地図を持ってきて貰った。
領地内の地理に詳しいお兄様なら、口頭で指示をすれば伝わるけれど、ツカエミヤはあまり土地勘がない。地図がないと迷子になってしまうかもれないわ。
私は半径1kmの円を書くと、ペンで印をつけた。
「お兄様はここ。中央病院の裏路地辺り」
「おう」
「ツカエミヤは……大広場にしましょう。剣のモニュメントがあるから、その前に立つこと。分からなけれは領民に聞けばいいわ。教えてくれるから」
「わ、わかりました……!」
迷わず歩けば7分前後で到着するけれど、15分でツカエミヤが辿り着けるか心配だわ……。
私は手を叩き、緊張の面持ちで地図を握りしめたツカエミヤとダルそうに歩くお兄様を見送った。