ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
「似合ってはいるのでしょうけれど……毎日一人パーティに興じている痛い人としか思えないわね……」
「はい!ミスティナ様は大変お似合いです!そのお姿は正しく、星空の女神と呼ばれるに相応し……ひえっ」
「ミスティナ」

 ツカエミヤが大声で私を褒め称えている声に気づいたんでしょうね。
 ディミオはノックもせず悪趣味な装飾が施された室内に戻ってくると、私に声を掛けてきた。
 悲鳴を上げたツカエミヤのことなど気にせずまっすぐ私だけを見つめるディミオは、当然のように私を背中から抱きしめた。

「ミスティナは、やっぱり星空の女神なんだね……」

 なにがやっぱりなのかはさっぱりよくわからないけれど、天の川をあしらった服を身につければ、誰だって星空の女神になれるでしょうに……。
 私は呆れながらも背中から抱きしめるディミオへ私の姿を見せるため、身体を捻った。

「これで、見えるかしら……」
「ミスティナ……!」

 ディミオは私が真新しいドレスを身に着けた姿を見て興奮しているようで、大はしゃぎしていた。なんだか、ディミオの瞳がハートに見えるわ…… 

「かわいいよ。誰にも見せたくない。ずっと腕の中へ閉じ込めておきたいな……」
「恐ろしいことを言わないで。この靴とドレス、サイズがぴったりだったけれど……」
「触れたら、大体のサイズはわかるだろ」
「え……」
「わかるよね?」
「えぇ……?聞いたことがありません」

 私が間抜けな声を上げれば、ツカエミヤも私の声に同意した。
 そう、よね。
 触っただけでは、サイズ感などわからない……わよね?
 一体どんな魔法を使ったのかしら……。

「細かいことは、気にする必要がないよ」
「細かいこと、かしら……?」
「絶対に細かいことではありません!とても大事なことです!」
「いいじゃないか。ミスティナ。皇太子妃教育の講師へ会いに行こう」
「え、ええ……。わかったわ……」

 ツカエミヤはどんな手段を使ってでも問いただすべきだと騒いでいたけれど。
 ディミオの有無も言わさぬ笑顔の前に陥落した私は、きらびやかな装飾の施されたドレスを纏い、彼に抱き上げられたまま、皇太子妃教育に協力してくれる講師の元へと向かった。

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