ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
「30分後、迎えに来るよ」
「ええ。皇太子として、頑張って」
「うん」

 皇太子としての公務にやる気を見せたディミオは、私を残して去っていった。

「積もる話もあるけれど、まずは目的を果たしましょう」
「ええ。これからよろしくね。ロスメル先生」

 残された私は、挨拶もそこそこにロスメルから皇太子妃のマナーをみっちりと教え込まれた。
 30分間はあっという間で、ロスメルと一緒なら半日くらいどうってことないわ。

「ミスティナは物覚えが早いわね」
「そうかしら?」
「ええ。すぐに私と同じか、それ以上の皇太子妃になれるわ」
「ロスメルにそう言って貰えて、うれしい」
「皇太子とは、いつから恋仲なの?」
「……ディミオ……殿下が、一方的に私へ行好意を抱いているだけなの」
「恋愛結婚ではないのね?」
「……今のところは、そうなるわ……」

 私はディミオとの出会いから、お兄様が突然情緒不安定になり、私の奪い合いを始めて大変だった話をロスメルに告げた。
 ロスメルはお兄様とあまり仲がよくないことを知っていたから、お兄様の変わりように絶句している。

「ロスメルにも、見せてあげたかったわ。お兄様の変わりようは、それはもう……」
「テイクミー卿が、ミスティナにそのような態度を取るなんて……。大変だったでしょう」
「大丈夫よ。お兄様はどうにか言いくるめられたから。それよりも、殿下をどうにかしなくちゃ」
「殿下をどうにかするって……?ミスティナ、何をするつもり……?」

 ロスメルは私がカフシーの家業を受け継ぎ、代行業を営んでいたことを知っている。
 私に助けを求めてきた、哀れな子羊だったからだ。
 私は皇太子妃になった後、王城でカフシーが営む家業の支店を開店させるつもりだと、ロスメルの耳元で打ち明けた。

「でも、ミスティナは……テイクミー卿とペアを組んでいたのよね?ここにはテイクミー卿がいないわ。一人で悪党と戦うなんて……危険よ!」
「心配しないで。とっておきの味方が仲間になったの」
「味方……?」

 私は恥ずかしそうに、もじもじと肩を揺らすツカエミヤに声を掛けて手招きした。
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