ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。

「地獄の果てまで追い詰めて、縛り付けるからね」

 嫌だわ、ディミオったら。冗談よね?
 私はそうやって笑い飛ばそうとしたけれど、笑い飛ばした所で本気の彼は、私をドン引きさせるような話しかしないでしょうね。
 私はこれ以上彼を怒らせないように、微笑みを返すだけで精一杯だった。

「ミスティナ……星空の女神……。誰にも渡さないよ。君は、おれのものだ」
「ご公務、頑張ってね」
「ありがとう。その言葉があれば、5倍のスピードで公務が出来そうだよ」

 5倍のスピードって……冗談じゃないわ!
 ゆっくりやってくれないと、一日ですべてを終わらせて戻ってくる前に、脱走がバレてしまうじゃない。これは、一度様子を見た方が良さそうね。
 私は従者が監視を始める前に自室を脱走しようとしていた計画を取りやめる。

 ディミオがどの程度公務に時間を掛け、戻ってくるのか。
 私は皇太子妃になるための知識を詰め込みながら、何度も時計を確認した。

 1時間、2時間──帰ってこない。
 3時間、半日──まだ大丈夫。
 翌朝、昼──寝泊まりはどうしているのかしら。
 3日目、夜──ちゃんと食事は取れてる?
 4日目、朝──これほど戻ってくるのが遅いなら、迷える子羊を助けに行くために自室から抜け出しても、問題なかったじゃない。失敗したわ。

「皇太子妃」

 ソワソワと、数時間単位で時間を気にしていたからかしら。
 ディミオの従者が、私へ話し掛けてきた。
 ディミオと入れ替わっている際は、沈黙の皇子と呼ばれる従者が私に話し掛けて来るなんて……。
 明日は、槍でも降るのかしら?

「殿下の意にそぐわない行動は、お控えください」
「ディミオの意にそぐわない行動って……?あなたが何を言っているのか、さっぱりわからないわ。わかるように説明してくださる?」

 私は従者からの指摘をしらばっくれることにした。

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