ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
 世界の理を捻じ曲げてまで、私は生き返りたくないわ。
 縁起でもない話をしないで欲しいし、今こそ従者に私の心を読んでもらって、一言一句違わずディミオに伝えて欲しいわね。

 心の中で考えていれば、従者がディミオの下へ歩き始めたから驚いた。
 ちょっと待って。冗談よ?
 恥ずかしいから、伝えなくていいのに……。

「なに、アンバー。おれに伝えたいことがあるなら言って」
「ディミオ。人間は死んだらおしまいよ。魔法で生き返らせるなんて、考えてはいけないわ。貴方は皇太子。いずれはこの国を担う皇帝となるのだから。皇帝は、常に正しい判断をしなければ……国民たちから、反感を買うわよ」
「君と愛し合うためなら、クーデターなど怖くないよ」

 ディミオは理解しているのかしら? クーデターが起きれば、ディミオと私。
 双方の命が危ぶまれるのに──。

「巻き込まれて、命を落とすのはごめんだわ」
「ミスティナ……」
「貴方と婚姻しなければよかったなど……私に、後悔させるようなことはしないで」
「おれはミスティナを幸せにする。自称兄の思いを受け入れるべきだったと……おれが、後悔させるわけがないだろ」

 人間の人生は、婚姻すれば終わりではないわ。
 生まれたら死ぬまで、私は私として生き続けなければならない。
 お兄様と婚姻した方がよかった。

 そう思う日が来るなど、私には想像もつかない。

< 93 / 118 >

この作品をシェア

pagetop