ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
 ディミオが私の為に整えてくれた、この部屋で危機に曝されるべきか──別室で過ごすことを許すかは、ディミオに選ばせてあげる。

 ディミオは、どちらを選ぶのかしら?
 私はディミオの答えが待ち遠しくて仕方ない。
私の予想では──。

「ミスティナ……。無茶をしないでくれ。おれも一緒にいる時だけなら……」
「それでは駄目なのよ。今まで通りの生活が送れないじゃない」
「今まで通りって……」
「今までも、これからも。私は一人で助けを求める哀れな子羊を救うの。ディミオの力は借りないわ」
「ミスティナ……」
「どうするの、ディミオ。2つに1つよ。この部屋に呼びつけて罪を償わせるか、別室で哀れな子羊に助けを求められた時だけ、リストに掲載された人間たちの始末を許可するか……」

 第三の選択肢を、ディミオに選ばせる気はない。
 どちらにせよ、私の思い通りになるような選択肢を与えているもの。
 ここから私が負けるようなことはないはずよ。

「……ミスティナの安全を最優先に考える」
「答えは?」
「悪党達を自室に招くなんて、危険すぎる。別室を用意するよ。でも……」

 ほら。やっぱり私の、思い通りになった。
 満足げに頷き、やっとタヌキとキツネの化かし合いが終わったと、ほっと一息つく暇もなく。
 ディミオは言葉を濁してから、言いづらそうに続きを話し始める。
 私にとっては到底納得できるはずもない、続きの言葉を。

「ミスティナが悪党と直接言葉を交わすことは、許可できない。ミスティナが顔を合わせるのは、悪党に虐げられている被害者だけ。その場で見聞きしたことを教えてくれたら、あとは全部おれが……」
「それでは意味がないわ」
「ミスティナはおれが公務の間暇だから、国の為になることがしたいんだろ。ミスティナの意思は尊重するよ」
「救いを求める哀れな子羊と、面会を許可してくれたことには感謝するわ。最大限の譲歩をありがとう。でもね、ディミオ。貴方の妻は、この程度で満足するような女ではないのよ」
「駄目だ」

 私は欲張りだから。
 依頼を受けた以上は、自分の手で解決に導きたいのよね。ディミオも譲歩してくれているのはわかるけれど──もう一声、私の気持ちに寄り添ってくれないと困るわ。

「ディミオは心配性ね」
「どれほど万全を期したとしても、各々が生まれ持つ魔法によっては、その万全さえも容易に覆される。この世に絶対など、ないんだよ。おれはミスティナに、死んでほしくない」
「大袈裟ね……」
「大袈裟なんかじゃない!ミスティナは、危険を顧みなさすぎなんだ……!」
「それが私の、魅力であると自負しているわ。なにか問題でも?」

 魅力を失った私など、ディミオにだって無価値でしょうに。
 ディミオはそんな私だからこそ好きになり、私を求めたんですもの。
 問題しかないなど、言わせないわよ。
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