片親だからと婚約破棄をされましたが、『聖女の目』を持つ私を10歳の若さで見限るとは愚かですね

1話

 大昔、女神の生まれ変わりである聖女が世界を闇から救った。
 しかしその強大すぎる力をこの世に残すことはできないと、大陸の五つの国に視覚[鑑定]・聴覚[予言]・触覚[創造]・嗅覚[予測]・味覚[異常状態無効化]に分けた。
 以後、聖女の転生体は『聖女の眼』『聖女の耳』『聖女の手』『聖女の小鼻』『聖女の舌』と特殊能力を持って生まれてくる。
 わたし、エリサラ・カギュラはその中の『聖女の眼』を受け継ぐローディフェ王国侯爵家の令嬢に生まれた。
 生まれた時に、わたしの母はそのまま亡くなってしまった。
 父は相当に落ち込んでいたけれど、わたしの歳の離れたお兄ちゃんたちと使用人たちがわたしを懸命に育てていたのを見て父として積極的に接してくれるようになる。
 女神と同じ薄紅色の髪と金の瞳を持って生まれたため「聖女の生まれ変わりだろう」と周囲からちやほやされてきたわたしは、六歳になった時に貴族デビューするための王都に行くことになった。
 その頃になると一番上のお兄様ユークレスは学園に戻り、次兄アリスティッドは学園に入学。
 つまり――。

「おにいさまたちとおうとにいくの? いくー!」
「うん、行こう~!」
「学校が終わったらお兄様たちがエリサラを案内してあげるからねぇぇぇぇ!」
「うひゃひゃひゃ~」

 ほっぺを左右からすりすりされて、わたしはきゃっきゃ、と楽しさに声を上げる。
 長男ユークレスは貴族学園幼学部四年生。
 次男アリスティッドは貴族学園幼学部に春、入学する。
 だから妹の王都デビューに兄二人も同行できるのだ。
 それがとっても嬉しい!
 ユークレスお兄ちゃんは学年首席で王弟殿下と仲良しなんだって。

「ただいま。クレス、お前また帰って来ていたのか。いくら転移陣があると言ってもこんなに頻繁に帰って来ていいのか? 寮に入った意味ないだろう」
「夕飯を食べたら帰りますよ。それに、寮があるのは魔力の低い者用です」
「やれやれ。こりゃあアリスも毎日帰ってきそうだな」
「エリサラから離れたくない。学園なんて行きたくない」
「「アリス」」

 ユークレスお兄ちゃんと、帰ってきたお父様に咎められるアリスティッドお兄ちゃん。
 お母様はわたしを産んですぐにお空に行ってしまったらしいけれど、寂しいと感じたことはない。
 だってわたしの家族はいつもわたしをとっても大事にしてくれるから!
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