うちのクラスの吉田くん!

その16

 バレンタインもとっくに過ぎ、もうすぐホワイトデー。

 好きな人もいない俺にはどちらも関係ない。

 一人っ子の俺は、吉田みたいに妹でもいれば別だったかもしれないと、この時期にだけはチラッと思ってしまう。

 ところが、吉田は最近毎日スイーツのカタログを見ているらしい。


「よっしーは最近ずっとそんなのを見てるなあ、妹さんにでもあげるの?」

 俺は、真剣な顔で人気スイーツのサイトを見漁る吉田にそう聞いてみた。

「いやいや!トバ先輩がいいこと教えてくれてさ!」

 吉田は目を輝かせながら俺に説明しだす。

「まず一番好きなキャラのゲームやディスクやCDなんかのグッズを、キレイにしたテーブルに置くんだ。それからその周りを華やかに飾ってだな、ポスターやチラシをすぐそばに貼る!それが全部済んだら、キャラにあげるつもりで菓子を供えるんだと!」

「えっ……はあ??」

 聞いていた俺は吉田が何を言っていたのか全く分からず、思わず首を傾げた。

「…本当は女キャラ相手が良いらしいんだが、俺が好きなのはアーツやロボだしなあ……」

 吉田は苦笑いで頭を掻きながら続ける。

「ホワイトデーでアーツに日頃の礼として、俺の好物のシュークリームをやれる!!……やっぱり駅前の『プラン』のシュークリームでいいかな!」

 吉田は言い終わると立ち上がり、呆然としている俺に爽やかな笑顔で手を振り立ち去った。

 ……あのトバ先輩、一体よっしーに何を教えたんだ??
 でもたぶん、そういう意味じゃないと思うんだ……
 ホワイトデーも、そういうものじゃない気がする……


 吉田はおそらく興奮のしすぎで、トバ先輩の教えたたくさんの情報が混じったままだったんだろう。

 そしてホワイトデー当日。
 渡瀬と俺との三人の帰り道に吉田は宣言通り、“アーツ”のために『プラン』のシュークリームを買いに走ったのだった。
< 18 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop