うちのクラスの吉田くん!

その28

 吉田はいつも放課後になるとすぐ、真剣な表情でしかも小声で携帯通話をしている。

「よっしー、今日も?いつも誰と話してるんだよ?」

 俺がそう聞いても吉田は口の前に人差し指を立て、

「悪いが、“企業秘密”だ」

というばかり。

 連休や夏休み冬休み中じゃないからアルバイトじゃないし、家族じゃないだろうし。
 しかも毎日、放課後すぐに内密な電話なんて……

 すると吉田はさっきとはうって変わって、明るく苦笑いしながら言った。

「あ、そういやあハマ部長がまたカズキのこと呼んでた。今日暇ができたら来てくれってさ。……そっちの部長にはくれぐれもバレんようにな」

「テガ部長、ハマ先輩のこと気にするもんね……」

 俺も思い返して苦笑いすると、今度はいつものやり取りに入った。

「で、今日はどこの教室を使うの??」

 そう、なぜか吉田が所属する『二次元同好会』には決まった部室が無いため、俺は毎日のように放課後になると吉田に聞いていたのだ。

「今日は『物理準備室』な〜」

 俺はヘラヘラとした吉田のその返事を聞きながら、さっき吉田がしていた通話のことを思い出す。

 毎日放課後にする通話のやり取り……

 “企業秘密”……

 何よりそのやり取りが終わってからいつも教えられる、二次部の“部室”の場所……
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