うちのクラスの吉田くん!

その30

 最近吉田はなんだか落ち着かず、携帯を覗き込んではかなりご機嫌な様子でニヤついている。

「よっしー、なんかまた嬉しいことでもあるの?」

 俺がそう聞くと、吉田は待ってましたとばかりに勢いよく話し出す。

「七十年代の名作日本アニメ『合体ロボ ファイブビクトリー』の海外実写ドラマが、ついに待望の映画化だ!!これが喜ばずにいられるかっ!!」

 そのアニメは正月辺りに吉田が『海外実写ドラマ化した』と喜んでいたもの。

 さらに吉田は海外実写化の経緯を、自分でネットでかき集めた情報としてかなり詳しくまとめて俺に教えてくれた。


「……だから実写化はその国だったんだね。日本の一つのアニメをそんなに思い入れて実写に作ってくれたんだ、それはすごく光栄だよ。それもそんなにリスペクトして作ってくれたなら嬉しいことだな」

 話を聞いた俺も感心してそう頷く。
 吉田は涙を拭いながら続けた。

「俺は彼らの勇姿を見届けるため、絶対に映画館に観に行くぞ……!!念の為、バスタオルを持ってな!!」

 ……まさか、いくら感動するストーリーなのがわかってるからって泣くためにバスタオルを??

 俺は必死に吉田に、『バスタオルは目立つから』と止める羽目に。


 そして映画日本公開初日。
 買ったばかりの小さめのマイクロファイバータオルを手にした吉田と俺は、なぜか揃って映画鑑賞に繰り出すことになったのだった。

(ちなみに吉田に誘われた渡瀬は逃げました)
< 45 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop