朝型ちゃんに一目惚れ
「よっしーの妹じゃん。高校入ったばっかで行ったことないから今日のカラオケ、一緒に行きたいんだってさ。お前、会ったことなかった?」

 渡瀬の言葉に、俺は首を横に振った。
 その子は今、兄貴である吉田と話をしていて、楽しそうに笑っている。

 今まで双方の家をそんなに頻繁には行き来しなかったから、吉田の妹の顔を見たのは初めて。

 きっとこれ聞いたらみんな、俺を変だと思うだろう。
 あの子の周りが、俺にはなんだかキラキラして見えた。

 ひまわりみたいに、太陽みたいに……

「カズキ〜!また寝坊かよ!」

 近くまで来ると、吉田が笑いながら俺をからかう。そばにいたその子も、俺を見て笑っていた。

「よっしー、その子……」

「悪いな、今日お前に言って無くて。どうせ起きたばっかじゃ頭、回ってないだろ?」

 吉田は笑って妹に促すと、本人は頭を下げて挨拶してくれた。

「はじめまして、吉田陽菜です!今日ご一緒させてもらうことになりました、よろしくお願いします、星野一樹先輩!」

「年子の妹だよ。少々ブラコンでさ〜」

「なぁにそれ!」

 からかいで言った兄貴の肩を叩き、その子は笑いながら返す。

「よろ、しく……」

 俺は呆然としたまま陽菜ちゃんを見て挨拶した。

「カズキまだ寝ぼけてんのか〜?」

 吉田はニヤニヤ笑って言う。

「な、何で、俺の名前……」

 俺はフルネームで言われたのが気になってそう聞くと、陽菜ちゃんは楽しそうに笑いながら言った。

「ごめんなさいっ!朝が苦手な、吸血鬼みたいな友達がいる、ってお兄ちゃんから聞いていたから印象が強くて、名前もすぐフルネームで覚えちゃったんです!私と正反対だな、って……」

「え……」

 吸血鬼みたいなんだ、俺……

 思わず俺は半笑いになってしまった。

「失礼なやつ〜!一樹センパイにちゃんと謝れよ〜?」

「う……すみませんでした!」

 俺に頭を下げる陽菜ちゃん。

「あはは、いいよ」

 俺、たしかに朝苦手だし、夜型だからな……

 俺は少しずつ陽菜ちゃんを意識し始めていた。
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