朝型ちゃんに一目惚れ
「一樹先輩、空は好きですか?」

 突然の陽菜ちゃんの言葉に、下を向いていた俺は、そのまま陽菜ちゃんを見た。

「え??」

 目を輝かせながら続ける陽菜ちゃん。

「先輩は、朝日が昇る所を見たことがありますか?キレイなんですよ〜!月とか星とかが西の空に半分くらい見えてて、東の空がだんだん明るくなっていくんです。冬だとそれがよく見えて!星空もキレイだけど、青空も悪くないですよ!ぱ〜っと、こう明るくて、空が青くて〜……!!」

「「……。」」

 熱の入った陽菜ちゃんに、周りは呆気にとられた。

「え、あっ!!…その、だから、今度のウォーキング、空見ませんか……?」

 陽菜ちゃんは俺を見て、少し恥ずかしそうにそう付け足した。

「寝る直前にお部屋で見る朝日より、きっとキレイだと思いますから……」

「…そっか!あはは、ありがとう!」

 俺は素直に嬉しくて笑った。


 約束の前日。

 俺は眠れないまでも、夜九時過ぎには布団に横になった。
 出来るだけ体をリラックスさせて、なるべく何も考えないようにして…

 今日は早めに眠れたかもしれない。いつの間にか寝付いていた。


♪♪〜

 携帯を取る。吉田からのモーニングコールだ。

『はよ〜、“吸血鬼先輩”?起きてる〜??』

「おはよ、よっしー。起きてるよ」

『お〜!やるじゃん!!』

 そう、奇跡なのかなんなのか、当日早朝五時半、俺は約束の時間通りに起きられたのだった。

 かなりドキドキしている。
 普通に朝スッキリ起きられる人からしたら、なんてことはないかもしれない。
 でも俺からしたら、珍しいどころじゃない。かなりギクシャクしながらウォーキングする準備を済ませた。

「行ってきま〜す」

「え、一樹!!?…いってらっしゃい……」

 早朝から起きた俺を見て母さんが、目を丸くして見送った。
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