紳士な若頭の危険な狂愛
「そこを出て、すぐタクシーで帰ってください。
ここで見ていますから」
「こんな大金いただけません!
それに電車が」
「貴女が向かおうとした駅なら、すでに終電が終わっていると思いますよ?」
時計を見ればすでに午前一時を回っていて驚いた。
終電は十二時半。もう駅も閉まっているはずだ。
「タクシーだと夜間料金もかかりますし、それで足りますか?」
「十分すぎると思います。
・・・・・・タクシーでなんて帰ったことがないのでわかりませんが、多分」
彼は目を丸くすると、少し身体を曲げてくつくつと小さく笑った。
慎ましく生きていて、タクシー自体自分のために使ったことがほとんど無い。
だから正直に答えたが、なぜか彼に受けてしまったようだった。
「失礼。素直なお嬢さんだなと。
どこか泊まりたいならホテルを用意しましょうか?
もちろん泊まるのは貴女一人ですよ」
にこりと言われて一瞬勘違いしそうになった自分が恥ずかしい。