紳士な若頭の危険な狂愛
「美東さん、でしたよね」
「はい」
「このたびはありがとうございました。
お金はお借りします。
お返ししたいので住所を教えていただけませんか?」
勇気を振り絞った。
これだけで彼との縁を切りたくはない。
だけど美東さんは眉尻を下げ、
「律儀なのは素晴らしいことですが、そのお金は私が貴女にあげたものです。
そうですね、勇気を出して友人を救った貴女への報酬、それで良いでしょう?」
「ですが」
「私と貴女はここで終わりです。
もうお会いすることも無いでしょう。
どうか幸せに。
もう二度と危ない場所に来てはいけませんよ」
彼はそういうと、私をせっつくように道路へと追いやった。
「手を上げて」
路地から彼の声がする。
私が仕方なく手を上げるとすぐにタクシーが停まりドアが開いた。
「さようなら」
車に乗り込みその言葉で外を見ると、すでに路地に彼の姿は見えずドアが閉まった。