紳士な若頭の危険な狂愛
「床に散らばったそれらしい荷物を鞄に詰め込んできたんすけど、これで良いっすかね?」
中を見れば財布や携帯などが入っていた。
化粧品などの一部は無いようだが、そんなのはどうでも良い。
私が礼を言うと、良いっすよ~と彼は笑った。
他の人に指示をする美東さんの横に行き、鞄からハンカチを出す。
ハンカチだけ防水ポーチに入れていたおかげで汚れていない。
すぐに頭に当て、顔に流れている血を拭き取る。
一部は固まってきているようだが、ハンカチは血の色に染まっていく。
すると手首を軽くつかまれ、離された。
「このハンカチは綺麗ですから」
「そうではなく、血で綺麗なハンカチが汚れてしまったではありませんか」
「そんなのはどうでも良いです。
それより病院行かないと」
「さっきのお嬢さん、絵理奈さんという子はタクシーで帰らせました。
警察に行くといったんですが、色々面倒になるので素性を明かしたら言うことを聞いてくれました」
「お手数おかけしました。
勤めている会社の社長のお嬢さんなんです。
で、病院に」
明らかに話をそらされているので私が軌道修正すると、美東さんはクスッと笑う。