紳士な若頭の危険な狂愛
「ずいぶんと無防備に男の家に入るのですね」
前を進む美東さんの言葉に、軽い女だと思われたのかと弁解しようとした。
「違います!私は」
彼が部屋のドアを開く。
リビングらしき部屋は電気がついていなくても一面に広がる窓から湾岸の夜景の灯りが部屋に差し込み、思ったよりも暗くない。
背後から大きな腕が私を抱きしめてた。
彼の香水と血の匂いが混じった香りが私を包み込む。
「易々と私のテリトリーに入ってくる。
いけないお嬢さんだ」
耳元で囁かれる低い声。
匂いも、声も、そして服越しでも伝わる体温で私の身体が反応する。
それだけ美東さんを欲していたのだ。
外からの光しか感じなかった暗い部屋も、目が慣れてきて家具形もわかってきた。
私は上半身を動かし、彼の顔を見上げる。
既に血は固まったのか、顔に血は流れていない。
そんな頬に手を伸ばした。
「会いたかったんです」
私の言葉を受け止めるように、私の手に彼の手が重なる。