紳士な若頭の危険な狂愛
「それにね、うちの会社は大会社と取り引きをしている。
うちでしか出来ない部品を作れるからというのもあるが、同時に信用されているからだ。
昔は暴力団と持ちつ持たれつの会社なんてごまんとあった。
だが今は時代が違う。
特に大会社はコンプライアンスが厳しい。
その取引先にヤクザと関係している人間がいる、それが噂だろうとうちの会社は簡単に取り引きを切られてしまうんだよ」
いつもの温厚で人の良さそうな社長の姿は微塵もなく、あからさまにヤクザを嫌悪している発言に言い返しそうになった。
美東さんは違う、あの人は何度も助けてくれた人なのだと。
だけどそういう私だって、彼の何を知っているのだろう。
どんな仕事をしているのかも知らない、喧嘩というか殴ったりすることも慣れていたようだったし、頭にあれだけの傷を負っても気にしていなかった。