紳士な若頭の危険な狂愛

そして社長の言い分ももっともだ。
ヤクザなんて今までドラマか映画かニュースでしか見たことの無い人たちだった。
法律も厳しくなり随分と減ったなどと聞いていたが、今はその人達と関わったという噂だけで仕事が切られるなんて。
それは小さな会社では倒産に繋がるほどの大きなリスクだ。

「絵理奈にはケイという男に二度と会わないこと、勝手なことをしない事を約束させた。
一谷さん、君もだ。
今後ヤクザと関係することは一切止めてくれ。
これは、社長命令だよ」

隣にいる絵理奈ちゃんは随分叱られたのかしょげたままだ。
私は社長の目を見て、はい、と答えると、社長の厳しい表情が一気にほどけた。

「娘のことで巻き込んでおいて、怖いことを言ってすまなかったね。
真面目な一谷さんがとは思っていても、真面目だからこそ騙されるんじゃと心配で」

ごめんねとぺこぺこ頭を下げる社長は、もういつもの社長だった。

こっちこそごめんなさい。
はい、なんて答えてしまって。
だって私には彼との大切な約束がある。
今回のことで聞きたいことも出来た。
だけれど社長達に迷惑をかけてはいけないのはわかっている。
心の端に痛みを感じながらも、美東さんのことは皆に隠し通す決意をした。

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