紳士な若頭の危険な狂愛
「私、このマンションでコンシェルジュを担当しております。
失礼ですが何度かそちらを利用されましたか?」
視線が向けられた先は私の持っている鍵。
「すみません、なんだか壊れているみたいでドアが開かなかったんです。
ありがとうございます」
「お待ちください。
そのキーは無効となっておりますので入れません」
「えっ?」
無効?この鍵が?
「そんなはずは。
25階の美東さんのお宅の鍵ですので使えるはずなのですが」
私の言葉にコンシェルジュの女性は特に表情も変えず、
「詳しいことはお話しできませんが、そちらの鍵が無効であることは間違いありません」
彼女の再度の言葉に、ようやく意味がわかった。
この鍵は使えない。
会う約束をしたのだ、引っ越している訳がない。
だからすがるようにな気持ちで思いついた理由を尋ねる。
「もしかして鍵を交換されたとか」
「先ほどもお話ししたとおり無効であるとだけしかお答えできません」
鍵を交換したわけじゃ無い。
そうなると、考えたくないことが過る。