紳士な若頭の危険な狂愛
「美東さん、引っ越しをされたのでしょうか」
「個人の情報はお答えできません」
訴えるように言ったが、やはり彼女から答えは聞き出せない。
マンション内に戻ろうとした彼女に、イチかバチかの質問を投げた。
「では、この鍵が使用できなくなったのはいつ頃か、教えていただけませんか?」
彼女が立ち止まる。
単に言い方を変えただけで、きっちり仕事をしている彼女を困らせるだけだとわかっていた。
だけれど教えて欲しい。
そうしなければ私は。
「確か、二週間ほど前だったかと」
彼女は振り向くこと無くそれだけ言って、中に入ってしまった。
最後気を遣ってくれたのか哀れんでくれたのかどうでもいい。
彼女の背中に向かって私は頭を下げた。