紳士な若頭の危険な狂愛

「あいつはね、俺が組長になってすぐくらいに拾ったんだ。
借金の回収に言ったら、親は逃げて小学生の義隆だけが家に取り残されていたんだよ。
随分放置されてたんだろうな、やつれた顔だったのに強い目をしていた」

驚く話を聞かされた。
自分の境遇は人より辛いと思いつつ、もっと酷い人がいることは理解していたけれど会ったことは無かった。

「元々頭も良くてね、大学に行かせれば主席で出やがった。
そんな頭持ってるのにもったいない、カタギの世界に行っていいと言った。
だが恩を感じてるのか、暴対法で生きていくのが苦しくなるこの組をなんとか生きながらえさせてくれた。
俺は病気で足があまり動かない。
この組も構成員は十名ほどの小さなものだ。
俺で終わりにするつもりだったが、まだいる構成員達がまともに社会に出るまではと義隆が継がせて欲しいと言ってきた。
皆から信頼も厚く、次期跡目は揉めること無く決まった。
だがね、組同士の争いもあるし警察の目は厳しい。
任侠だ、極道だと人気の映画にあるが、所詮はただの暴力団。
カタギで生きてた者が来る場所じゃぁ無いんだよ」

組長さんの目は鋭いままなのに、優しさを感じさせる。
おそらく美東さんも私をこの世界に近づけさせないために離れたのだろう。
組長さんとしては、美東さんにふさわしい同じ世界の女性と結婚して欲しいのはわかる。
私を心配すると同時に邪魔な存在なのも理解できた。

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