紳士な若頭の危険な狂愛
「藤代組って知らねぇ?俺そこの構成員。
この辺、俺の組が仕切ってんだよ。
だから誰も助けない。
わかる?この意味」
おびえる私に気づいたのか最上の口はなめらかになり、私の顔に近づく。
「金は身体で払えば良いよ。
あんたは地味だが身体だけは良さそうだ」
「そんなこと、うちではやってないんですけどね」
この場にそぐわない、柔らかでゆっくりとした声が路地に響く。
最上の後ろには、綺麗な黒髪に三つ揃いのスーツを着た背の高い男がいた。
一見優男に見えるほど、綺麗な顔で優しい顔をしている。
だけれど、なぜか取り囲む空気が違うように思えた。
「あ?なんだお前」
最上が私の腕を握ったまま、最上より背の高い男を睨み上げる。
「確かにここは藤代組のシマですが、私は君を知りません」
「アンタどっかの会社員か?
こっちはヤクザなんだ、アンタなんて場違いなんだから失せな」
「では、藤代組の若頭の名前を言ってください」
男は静かに不思議なことを聞いてきた。
終始威嚇する最上など気にもしていない。