紳士な若頭の危険な狂愛

香ばしい香りが漂ってきて、美東さんがトレーに白磁の珈琲カップ二つとスティックの砂糖やコーヒークリームのポーションなども持ってきてローテーブルに置いた。

「洒落たものは無くてすみません」

美東さんが私の横に座った。
お互い腕を下ろしてもぶつからないくらいに離れている。
彼に砂糖の量などを聞かれ、全て入れてくれた珈琲カップを手渡された。
飲みながらそろっと隣を見てみると美東さんは目を細めて私を見ていたので、気恥ずかしくなって俯く。

「怒っていませんか」

美東さんの言葉に顔を上げると、何故かその瞳は寂しげに見えた。

「怒っています、というよりも悲しかったです。
何故あんな嘘をついたんですか?」

彼は口もつけずに珈琲カップをローテーブルに置く。

「身勝手だとは思うのですが先に質問をさせてください。
何故、組本部まで来たのですか?」

「美東さんに会いたかったからです。
それに組長さんと何の賭けをしていたのですか?
美東さんはもしかして私が来ることに賭けていたのですか?
組長さんに会わせるのが目的だったのですか?」

美東さんは瞬きをした後に軽い笑い声を立てた。
こちらが質問したいのに逆に質問されたのだ、単純明快な答えだけ返して矢継ぎ早に質問したことを笑われてむっとしてしまう。
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