紳士な若頭の危険な狂愛

「カタギの貴女の側に私がこうしていることも本来出来ません。
貴女には、貴女を待つ人達がいるでしょう?
私は確かに貴女を愛していますが、貴女の望む愛であるのかは自信がありません。
おそらく私は貴女に狂っている。
こんな凶暴な愛に飲み込まれるより、穏やかな愛の方が貴女には似合っています。
これが最後のチャンスです。
一ヶ月答えを待ちます。
よく考えて下さい、貴女の幸せを」

彼はスーツのポケットから名刺を取り出し、ペンで番号を書いた。

「プライベートの連絡先です。
但し繋がるのはこれから一ヶ月だけ。
それ以降は繋がりませんし、この家にも居ません。
当然本部に来られても一切応じることはありません。
二度と貴女の前に現れないことを誓います」

そう言い切った彼の瞳は、複雑な感情が入り乱れているように見えた。
急に静かになった部屋。
夕暮れのオレンジが部屋に差し込み、その色はゆっくりと夜を知らせる色に変わり始めた。

< 67 / 74 >

この作品をシェア

pagetop